台湾漁業者の操業範囲は4530平方キロ拡大
漁業署の統計によると、2006年以来、台湾漁船が日本側から干渉された回数は250回余りに上る。我が国の海岸巡防署も幾度も艦艇を出して台湾漁船を守り、主権を宣言してきた。
今回の漁業協定は、双方が主張する排他的経済水域が重複している地域での漁業問題を解決するもので、台湾の主張する「暫定執法線」と日本の主張する「中間線」ではなく、緯度を基準とし、また台湾漁業者の作業の伝統にも配慮して、北緯27度以南、日本の八重山列島および宮古諸島以北の間に、「協定適用水域」を設けることとした(地図の甲の部分)。
台湾の漁業者にとって、この海域はもともと日本の漁船が入ることは少なく、南へ広がった適用水域は良好な漁場であるため、これからのマグロ漁の季節に漁民は安心して操業できることとなった。試算によると、台湾漁船が操業できる範囲は1400平方海里、4530平方キロ拡大した。
漁業署の沙志一署長によると、今回の協定適用水域では主にサバ、クロマグロ、カジキマグロ、シイラ、タイなどが獲れる。ここ3年、同海域では毎年平均800隻の台湾漁船が操業しており、漁獲量は4万トンほどである。今後、この海域での作業が干渉を受けることがなくなれば、漁獲量は2割増えることが期待できるという。
協定適用水域において、釣魚台列島以東の琉球諸島に近い海域は、双方が「特別協力水域」(地図の丙の部分)とし、それぞれが自国の法令に従って自国の漁船を管理する。双方の漁船はこの海域で相手側の公船から干渉を受けることはない。この他に、我が国が重視する海域や双方の漁業協力などについては、双方が設置する「台日漁業委員会」で話し合われることとなった。
深まる台日の友好関係
台日間の漁業論争は長年にわたって続いてきた。1996年、日本側は基線から200海里を排他的経済水域とし、それが外国の排他的経済水域と重なる時は中間線を採用するとした。これは台湾の漁業権益を損なうものであり、また釣魚台の主権にも関わってくる。
昨年、日本がさらに釣魚台の「国有化」という行動に出たことが、台湾海峡両岸の最も敏感な主権の神経を逆なですることとなり、強い不満が巻き起こり、東アジア情勢の緊張が高まった。
しかし、2011年3月11日、日本で東日本大震災が発生した時、多くの台湾人から多額の義援金が寄せられたことで、日本社会は台湾の善意を感じることとなった。
そして昨年8月、馬英九総統が東シナ海情勢が不安定化していくことを考慮して、「東シナ海平和イニシアチブ」を打ち出した。関係各方面に対して「国際法を遵守し、平和的に論争を処理すること。コンセンサスを見出し、『東シナ海行為準則』を定めること」を呼びかけたのである。これに対する具体的な対応として、今回の協議では技術的な漁業分野のみに焦点を当てた話し合いが行なわれたのである。
我が方は「主権は譲歩できないが、資源は共有できる」という原則を堅持し、協定に第四条を加えた。第四条は「この協定のいかなる事項またはその実施のための措置も、双方の権限ある当局の海洋法に関する諸問題についての立場に影響を与えるものとみなしてはならない」としている。
台日漁業協定が締結されたことに対し、国内の世論は、これは台日関係の安定化に大きく貢献すると評価している。また台日漁業協議の成果については、日本側も「歴史的意義を有する」とした。我が方は実質的な利益を得るとともに台日関係は新たな段階に入った。また、海上で懸命に働く漁業者にとっては、安心して大海へ乗り出す道が開かれたのである。